ウェブ解析をはじめとしたデジタルマーケティングで、事業の成果に貢献する「ウェブ解析士」は、これまでに4万6000人以上が受験している認定資格だ。連載1回目はウェブ解析士のキャリアについて、連載2回目はユーザーインタビューを紹介した。連載3回目では、少額の予算でデータを活用した改善活動が行えるメールマーケティングについて紹介する。
少額の予算でどう改善を進めるか?
連載1回目で紹介したように、中小企業のインハウス担当としてウェブ解析士になると、さまざまな仕事を兼任する必要があり、ウェブ解析にさほど時間を使えないという課題に直面する。次にあなたが直面するのは、データ解析から分かった課題を改善したいのに、その改善をするための潤沢な予算がないという現実だろう。
佐藤 佳(さとう けい)
Snow Peak USA, Inc. - Global Business Strategic Manager
愛知県出身。上級ウェブ解析士。大学卒業後、地元の中小企業に入社。そこで歴代初のウェブ問い合わせを受電対応したことがきっかけで、ウェブマーケティングの世界に興味を持つ。その後、広報・採用・マーケティングの戦略と実務の両方を経験する。2021年9月に海外赴任でオレゴン州ポートランドへ。現在はSnow Peak USA, Inc.でグローバル戦略を担当している
そう、中小企業にはお金が無いのだ。お金が無いというと語弊があるが、そもそもウェブサイトを作ったり、リニューアルしたりすることも会社にとって大変な支出であり、毎月の広告費や、定期的なウェブサイト改修費に予算がもらえるのはまれなケースだと思った方がよいだろう。また、あなたが駆け出しのウェブ解析士であったり、データを使った改善活動をする文化が社内に根付いていなかったりすると、予算確保はさらに困難を極める。
そこでお勧めなのが、ウェブサイトとメールマガジンを掛け算する方法だ。今回はB to Bを中心に解説していくが、基本はB to Cでも同じだ。また、施策の効果測定を行う上では顧客リストが1000以上あることが望ましいが、1000未満でもぜひトライしてほしい。
メールマーケティングを取り入れる6つのメリット
メールマーケティングはウェブ解析の入門に適している。理由は、①少額の予算で始められる、②ユーザー目線でコンテンツを作る技術が磨ける、③計測指標がGoogle アナリティクス(以降GA)よりも少なくデータの読み解きがシンプル、④データを活用した改善の社内文化を作りやすい、⑤ウェブサイトとも相性がよく相乗効果を出しやすい、⑥事業活動の基盤となる顧客データ管理にもメスを入れられる、といったメリットがあるからだ。
①少額の予算で始められる
単発でウェブサイト改修や広告をしようとした場合、少なくとも5万~10万円単位で予算が必要になってくるが、会社によっては難しい場合もあるだろう。一方メールマガジンは、自社の顧客数(あるいはメール配信数)や、どの配信サービスを利用するかによって費用はもちろん変わるが、初期費用を除くと数千円~1万円程度でスタートできるサービスもある。既にメールマガジンの運用をしている場合は新規の予算申請も必要なく、とにかく攻め手が得られるので、ぜひ活用したいコミュニケーション手段の一つだ。
②ユーザー目線でコンテンツを作る技術が磨ける
ウェブサイト構築の場合、全ページの連動性も考えてコンテンツを企画・制作しなければいけないが、その経験がない駆け出しのウェブ解析士や、外注できる予算が取れない場合、時間だけかかって何もできない期間が長くなりやすい。一方メールマガジンは、メールを1本考えて、文字さえ打てれば始められるため、社内で解決しやすい上に、ユーザー目線でコンテンツを作る技術を磨ける点はウェブサイトと同じである。
③計測指標がGAよりも少なくデータの読み解きがシンプル
GAに慣れるまでは、指標の定義や種類が頭に入っていなかったり、100以上あるレポートの何を見るべきか分からなかったりすることもあるだろう。一方メールマガジンは、見るべき指標が「メールの到達率」「解約率」「開封率」「クリック率」「コンバージョン率」の5つ程度なので、効果測定が非常にシンプルかつ、データを活用した改善スキルも磨きやすい。また、GAはサイト訪問者が具体的に誰なのかまでは分からないが、メールマガジンは配信システム次第で「どの顧客が何のリアクションをしたか」が分かるため、効果測定をする上でも具体的なユーザーから考えやすい特徴がある。
④データを活用した改善の社内文化を作りやすい
ウェブ解析士として事業の成果を出していくためには、社内の人たちの理解や協力を得て、データを活用した改善文化を作っていくことが肝である。その際に、ウェブ解析の詳しい話を持ち出すと敬遠されてしまうことも多いが、メールマガジンなら一般的な知識の延長線上で考えやすいため話が通じやすい。また、営業担当者と話をするなら、あなたの担当顧客のこの人が開封してくれた、この人はエラーで届かなかったけど転職/退職したのか、といったように、具体的なユーザー名や、相手が自分事になりやすい切り口から話をすることで、あなたの活動に興味を持ち、支援してくれる人を増やすことができるだろう。
⑤ウェブサイトとも相性がよく相乗効果を出しやすい
デジタルマーケティングで事業の成果を上げていくためには、より多くの人にネット上の店舗、つまりウェブサイトを訪れてもらうことがポイントの一つになる。その際のアプローチは、「まだ顧客ではない人」を集めるか、「連絡先が分かっている見込み客または過去の受注顧客」に再び訪れてもらうかだ。まだ顧客が少ない時期は前者の施策が中心になるが、顧客を継続的に支援し、安定した成果を出していくためにも、必ず後者の施策にテコ入れが必要になる。その際にメールマガジンがあると、新規獲得のフックも作れて、既存向けのアプローチも可能になる。何よりも「不特定多数の誰か」ではなく、「特定の個人」のメールボックスに情報を届けられる利点は大きい。
⑥事業活動の基盤となる顧客データ管理にもメスを入れられる
前項でも紹介したように、最終的には顧客データの活用が必ず必要になってくる。しかし、多くの中小企業は専任の情報システム担当者がいないか、兼任担当者だ。それにより何が起こるかというと、顧客マスタ(例えば氏名、メールアドレス、勤務先、会社規模、職位、購入内容といった顧客の基本情報)で何を取得すべきなのか? システム的な目線で見る人がいないか、それをする時間がない。また、顧客データの重要性やガイドラインが社内に浸透していないと、入手した顧客情報の登録や更新がされず、データの鮮度や精度が落ちやすい。顧客数が少ないときは目立った問題にならないが、5000人、1万人と増えていくにつれて、設計不足から顧客のセグメントができずに成果が出にくいとか、基幹システムの入れ替えや、問い合わせフォームと連動しようと思ったときに膨大なメンテナンス作業が発生するだろう。一方メールマガジンを運用していると、顧客データベースを意識した活動になるため、早期にこの問題に気づくことができ、解決行動が行いやすい。
メールマーケティングでウェブ解析を活用する3つのコツ
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