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Monday, February 21, 2022

「4月から成人年齢が18歳に なぜ?メリットや注意点は?」(みみより!くらし解説) - nhk.or.jp

ことし4月から、法律上、大人として扱われる「成人年齢」が20歳から18歳に引き下げられます。
なぜ引き下げられるのか、何が変わるのか、注意点も含めて解説します。

【なぜ法律で成人の年齢を定める必要が?】
子どもは経験も判断能力も十分ではないので、大人と同じ責任を負わせるのは酷だからです。
その法律上の線引きがこれまでは「20歳」でした。

【なぜ20歳?】

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実は、日本の古来の慣習では、「一人前」と認められるのは13~15歳でした。
それが1876年(明治9年)に20歳と定められました。
当時、欧米の主要国の成人年齢は21~25歳でしたが、こうした状況と日本の慣習を比較して、いわば「間」をとる形で20歳にしたようです。

【18歳に引き下げられるのはなぜ?】
ひと言で言えば政治主導で決まりました。
きっかけは、2007年に憲法改正の手続きを定めた国民投票法が議員立法で制定されたことです。この時に、投票できる年齢が「18歳以上」とされました。
欧米では1960年代から70年代にかけて、選挙権年齢や成人年齢が18歳に引き下げられていたので、「世界の流れに合わせるべきだ」といった理由で投票できる年齢が18歳以上になりました。
実は、この時に、選挙権年齢や成人年齢も一緒に引き下げを検討することになったんです。
選挙権年齢や成人年齢と何の関係が?と思うかもしれません。
確かに性質は違いますが、「独立した個人として社会に参加する年齢」という意味では共通点もあるので、一緒に検討することになったのです。
そして議論は国会を中心に進められ、その結果、2015年に、まず、選挙権年齢を18歳に引き下げる法改正が行われ、2018年に成人年齢を引き下げる民法の改正も行われました。
4月1日から施行なので、その時点で18歳と19歳の人たち、全国で200万人ほどが一斉に「大人扱い」されることになります。

【「大人扱い」とは?】

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法律上は2つの意味があります。
①1人で契約を結べる。
未成年は法律上保護されるので、高い商品を買わされたとしても、親の同意がなければ、無条件に取り消すことができます。
4月からは18歳になると原則として取り消せなくなります。
②親の「親権」が及ばなくなる。
「親権」というのは、親が子どもを守り育てたり財産を管理したりする権利や義務のことです。
18歳になると、住むところや進路を自分の意思で決められるようになりますが、親の保護の下からは離れてしまいます。
自由になる反面、責任も伴うということです。

【具体的には何が変わる?】
例えば、自分1人でスマホやアパートの契約を結んだり、クレジットカードを作ったり、ローンを組んで車を買ったりできるようになります。
ただ、契約を結んだら無条件に取り消すことは原則としてできなくなります。
公認会計士、行政書士、司法書士などの国家資格も取れるようになります。

【成人年齢が下がると様々な制度が変わる】
成人年齢を基準にしている制度は少なくありません。
同じように「20歳」を基準としている少年法も一部改正されました。

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少年法は、犯罪行為などをした20歳未満の少年を、非公開の少年審判といった大人とは違う司法手続きに乗せて立ち直りを支援する法律です。
民法とは違って、今回の改正でも、20歳未満は少年法の枠組みでは「少年」のままになりました。
ただ、18歳と19歳は、「特定少年」という中間的な位置づけになり、一定の重さの罪を犯した場合は、原則として、大人と同じ刑事裁判を受けることになりました。
これまでは、殺人や傷害致死などの罪が対象でしたが、これからは強盗や放火、強制性交などの罪にも広がります。
刑事裁判で有罪になると、少年院ではなく刑務所で服役することになります。
少年院は、教官が寮で一緒に寝泊まりして人間関係を築きながら立ち直りを支援しますが、刑務所では同じようなサポートはありません。
ここが大きな違いです。
4月からはこうした点も変わることに注意してほしいと思います。

【裁判員にも選ばれる】

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一方で、「裁く側」の裁判員に選ばれる年齢も「18歳以上」に引き下げられます。
ただ、成人年齢の引き下げに比べて、議論や周知が十分されてきたとは言い難い状況です。
まずは裁判員制度の意義、つまり、刑事裁判をプロに任せるのではなく私たち市民の目が入るという意義を改めて伝える必要があると思います。
ことしの秋には有権者の名簿から「くじ」で裁判員の候補者が選ばれます。
18歳や19歳の人たちも選ばれる可能性があります。
年明けからは呼び出し状が来るかもしれません。
学生は辞退することもできますが、その判断のためにも、制度の周知と、ルールについて学ぶ「法教育」に力を入れてもらいたいと思います。

【特に注意すべき点は?】

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何といっても、原則として契約を取り消せなくなる点です。
高額な商品をローンで買わされたりしても、自分で責任を負うことになります。
「消費者被害」の相談件数を見ると、今は成人した直後の20歳とか21歳の相談が多いのですが、これからは18歳や19歳が狙われるおそれがあります。
4月からは、心の中で、「お金の話には注意!」というスイッチを入れてもらいたいと思います。

【対策は?】
対策の1つは消費者被害に遭わないための教育です。
高校の授業でも、消費者庁が作った「社会への扉」というクイズ形式の教材や教科書をもとに、消費者として注意すべきことやお金の流れ、金融の仕組みなどを学ぶことになっています。
ただ、現場の教師からは「専門知識が十分でないので不安だ」といった声も上がっています。
先ほど述べた「法教育」もそうですが、専門家との連携も考えていく必要があります。

【もし被害に遭ってしまった場合は?】
勧誘の仕方が悪質であれば取り消せます。
一定の期間は契約を解除できる「クーリング・オフ」という制度もあります。
すぐに相談してもらいたいと思います。
全国共通の「消費者ホットライン」、電話番号「188」にかければ、地元の自治体の相談窓口につながります。
公的な窓口に相談しづらい場合は、まずは身近な人に相談してほしいと思います。
「自分が悪いんだから仕方がない」とあきらめることはありません。
身近にいる人も、十分に目を配ってほしいと思います。

※成人年齢の引き下げについては、NHKの特設サイトでも詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/adult-age-reduction/

(山形 晶 解説委員)

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