スバル「インプレッサXV」「フォレスター」、スズキ「スイフト マイルドハイブリッド」、日産「セレナ(Sハイブリッド)」などが、俗に“なんちゃってハイブリッド”と言われる「マイルドハイブリッド」を搭載している。
しかし、燃費を気にしているユーザーに向けてアピールしたいはずなのに、その省燃費性能は正直残念……というのがマイルドハイブリッドだ。パフォーマンスを追求したNSXのようなモデルであれば、購入する人も燃費が悪いハイブリッド車も納得できるだろうが、燃費が気になるファミリーカーでなぜハイブリッドとしての「うま味」が薄いモデルを発売するのか?
マイルドハイブリッドはなぜ多くラインナップされるのか? なぜハイブリッド(フルハイブリッド、ストロングハイブリッドともいわれる)一択ではないのか? その存在理由を、渡辺陽一郎氏が解説する。
文/渡辺陽一郎
写真/SUZUKI、NISSAN、編集部
【画像ギャラリー】燃費アップで表に出るより、裏方で支える。マイルドハイブリッドを搭載する現行モデルをピックアップ
■アイドリングストップ搭載時に光るマイルドハイブリッドという存在
世界初の量産ハイブリッド車として、初代プリウスが発売されたのは1997年だから、今では20年以上が経過した。ハイブリッドにもさまざまな種類が用意されている。日産の「e-POWER」、ホンダの「e:HEV」のように、エンジンは主に発電機を作動させ、駆動はモーターが受け持つタイプもある。このハイブリッドではモーター駆動が中心だから、運転感覚も電気自動車に近い。
そのいっぽうで、マイルドハイブリッドも見られる。スイフト、ソリオ、スペーシア、ワゴンRといったスズキ車が搭載するシステムでは、モーター機能付き発電機、制御機能、小さなリチウムイオン電池を備える。モーター機能付き発電機は、減速時の発電、アイドリングストップ後の再始動、エンジン駆動の支援を受け持つ。
スズキのマイルドハイブリッドに使われるモーターの最高出力は2.6~3.1psだ。走行中はほとんどモーターの存在を意識させない。
従って簡易型のハイブリッドとされるが、相応のメリットがある。まずアイドリングストップ後の再始動が、モーター機能付き発電機のベルト駆動で静かに行われることだ。スターターモーターの金属音を発生させないから、渋滞で発進と停止を繰り返してもわずらわしくない。また再始動に要する電力消費も小さく、リチウムイオン電池も併用するから、ワゴンRやスペーシアでは鉛電池の価格を非装着車と同等レベルに抑えた。
ちなみに最近のトヨタは、カローラやヤリスなどの新型車でアイドリングストップを廃止した。開発者に理由を尋ねると「発進の度に金属音が響き、わずらわしく感じるお客様が多い。アイドリングストップをキャンセルしている場合もあるので廃止した」とコメントしている。
しかし今は、アイドリングさせること自体に後ろめたさを感じるドライバーが増えた。廃止は消極的な発想で、キャンセルせずに不満なく使える低騒音のアイドリングストップを少なくともオプションでは用意すべきだ。トヨタの開発者も「アイドリングに罪悪感を抱くお客様がいることは承知しており、解決の必要があると考えている」と述べた。その点でマイルドハイブリッドには、アイドリングストップを静かに作動させられる効果がある。
■ 価格上昇分を燃料代の節約で取り戻せるマイルドハイブリッドという選択
スイフトが搭載するマイルドハイブリッドのJC08モード燃費は、ハイブリッドRSが27.4km/Lだ。マイルドハイブリッドとアイドリングストップを備えないノーマルエンジンのRSは24km/L。価格はマイルドハイブリッドRSが9万9000円高い。
このうち、マイルドハイブリッドRSは、マルチインフォメーションディスプレイが上級化され、購入時に納める税金は1万4000円安い。これらを補正すると、マイルドハイブリッドの実質的な価格上昇は約8万円だ。
そして実用燃費がJC08モードの85%、レギュラーガソリン価格が1L:150円として計算すると、8万円の実質差額を取り戻せるのは8万kmを走った頃になる。マイルドハイブリッドのJC08モード燃費は、ノーマルエンジンと比べて3.4km/Lの上乗せにとどまるが、価格差も少額だから妥当な距離で取り戻せる。
ただし使い方による損得勘定の違いもある。スイフトのマイルドハイブリッドの燃費数値は、ノーマルエンジンの114%だが、増加した14%のうち、約7%はアイドリングストップによる節約だ。走行中のマイルドハイブリッドシステムによる節約は残りの7%程度になる。使われる地域によっては、自宅と職場の片道30kmを走る途中、信号を通過するのは4回だけといった場合もあるだろう。このようにアイドリングストップの使用頻度が低い場合は、付けないほうがトクをすることも考えられる。
つまりマイルドハイブリッドを含めて、アイドリングストップは、ユーザーが自分の使い方やエコに対する考え方に応じて選べるようにする必要があるわけだ。
一方、フルハイブリッドのスイフトハイブリッドSLは、JC08モード燃費が32km/Lに達する半面、装備内容の割に価格が高い。燃料代の差額で価格差を取り戻すことはほぼ不可能だ。
コンパクトカーはもともと燃費が優れているから、本格的なハイブリッドを搭載しても、燃料代を大幅に安く抑えることは難しい。納める税額も全般的に安いから、エコカー減税が免税でも、税額の差はあまり開かない。そうなると本格的なハイブリッドは不利で、価格差を少額に抑えたマイルドハイブリッドが割安になることが多い。
■燃費アップなし!? 足りない動力性能をマイルドハイブリッドで底上げする
フォレスターとXVが搭載するスバルのe-BOXERは、水平対向エンジンに組み合わせるシンプルなハイブリッドシステムだ。モーターの最高出力は13.6psと小さく、4WDの2Lエンジン搭載車に採用している。ハイブリッドの優れた燃費を追求するなら、2WDの1.6Lエンジンに搭載しただろうが、スバルは走りの満足感を優先させて4WDの2Lエンジン搭載車にした。
この意図は高速道路を低回転で巡航中、アクセルペダルを緩やかに踏み増した時にわかる。スバルのリニアトロニックと呼ばれるCVT(無段変速AT)は、アクセルのダイレクトな操作感覚を重視するから、わずかなアクセル操作ではCVTの自動変速をあまり行わない。
そうなると、登坂路などでは低回転域におけるトルクの余裕が必要だが、2Lエンジンでは車両重量の割に物足りない場面もある。そこを補うのがe-BOXERのモーターだ。
モーターは反応が素早く、アクセルペダルを緩く踏み増した瞬間に、駆動力が立ち上がる。エンジンが高回転域の時は、モーターの存在がエンジンパワーのなかに消えてしまうが、出力の下がった低回転域ではモーターの恩恵がわかりやすい。モーターの駆動力が加速を滑らかに立ち上がらせ、エンジン回転の上昇へ繋げてくれる。
だが、e-BOXERは燃費数値があまりよくない。フォレスターのWLTCモード燃費は、2.5Lのノーマルエンジンが13.2km/Lで、2Lのe-BOXERは14km/Lだ。0.8km/Lの上乗せにとどまる。
しかもWLTCモード燃費の郊外モードでは、2.5Lが14.6km/Lでe-BOXERは14.2km/L。高速道路モードでは2.5Lが16.4km/Lでe-BOXERは16km/Lだから、速度域が高いとe-BOXERの燃費数値は2.5Lよりも悪くなってしまう。郊外と高速道路はハイブリッドに不利な場面ではあるが、2Lのe-BOXERが2.5Lのノーマルエンジンに負けるのは情けない。
とはいえ、この点を考慮してもe-BOXERは価格が安い。フォレスターに2.5Lを搭載するプレミアムは308万円、e-BOXERを搭載するアドバンスは、ドライバーの疲労などを検知するドライバーモニタリングシステムなども標準装着して315万7000円だ。e-BOXERにはモーターのほかに制御機能や駆動用リチウムイオン電池が搭載されるから、相応に高コストだが、燃費向上率が小さいこともあって価格はノーマルエンジン並みに安い。
ちなみにトヨタなどのハイブリッドは、ノーマルエンジンに比べて価格が35~50万円高く、燃料代は燃費数値上で55~70%に抑えられる。ハイブリッドは価格が高い代わりに燃料代は安く、使用目的に応じて選び分けられる。
ところがスバルのe-BOXERは、燃費数値が良好とはいえず、その代わりに価格もあまり高めていない。高速道路よりも市街地を走る機会が多く、なおかつe-BOXERの運転感覚や装備が気に入ったユーザーに適する。
そしてXVは2Lのノーマルエンジンを廃止して、e-BOXERのみにした。スバルの開発者は「今後は国内でも燃費規制が厳しくなるため、e-BOXERの役割が重要になる。そこを見越してXVの2Lはe-BOXERに絞った」という。
つまりスズキのマイルドハイブリッド、スバルのe-BOXERは、いずれも今後はベースエンジンとして搭載される。大量生産によってコストを抑え、すべての車種の燃費性能を底上げする。
見方を変えると、今後もしばらくはエンジン搭載車が存続するわけだ。いきなり電気自動車の時代にはならない。低価格車はベースエンジンのマイルドハイブリッド、中級から上級の車種はフルハイブリッドという具合に、エンジンとモーターの使われ方が用途や価格に応じて細分化される。
【画像ギャラリー】燃費アップで表に出るより、裏方で支える。マイルドハイブリッドを搭載する現行モデルをピックアップ
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February 15, 2020 at 09:00AM
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