政府が6月に閣議決定した「骨太の方針」と「新しい資本主義」の実行計画。岸田文雄政権の看板政策が株式市場に及ぼすインパクトと、今年後半に取るべき投資戦略を4人のプロに聞いた。4人目は、三井住友DSアセットマネジメントの石山 仁チーフストラテジスト。「新しい資本主義のビジョンは、質の高い企業を見直そうという機運を盛り上げるのではないか」と指摘。中長期的にROE(自己資本利益率)が高い、もしくは改善傾向にある企業の評価が高まるのではないかとみる。
――投資目線で見た場合の「新しい資本主義」の注目テーマは。
一つは「脱炭素・エネルギー」。ウクライナ危機を経て重要性が飛躍的に高まりました。脱炭素目標の実現に10年間で20兆円規模の投資をする計画です。「科学技術」では、量子やAI(人工知能)、パワー半導体の育成が注目されます。
「人への投資」では、転職やキャリアアップのために3年間で4000億円規模の支援をする計画。これに伴い、指導する人材の育成やマッチングするシステムなどの必要性も高まると思います。
これらは特に目新しい投資テーマではありません。もともと注目されていたテーマが、新しい資本主義の展望と重なることで、重要性がさらに高まったと言えます。
日経平均は自然体で年末3万円に
――年後半の相場見通しは。
日経平均株価は年末に3万円を見込んでいます。円安が企業業績を幅広く支えることで1株利益の上昇が続き、自然体で3万円の達成が可能とみます。相場がリスクオンになりPERが切り上がる展開になると、年末に3万3000円台の高値も見込めます。
こうしたメインシナリオに対し、確率は低いものの、米国でインフレと景気後退が同時に進むスタグフレーションが発生するリスクも念頭に置く必要があります。米国の金融政策の方向性を確認する意味で、8月のジャクソンホール会議は非常に重要なイベントになりそうです。
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――年後半の狙い目の銘柄は。
円安メリットの大きい銘柄が候補です。一つは、自動車や半導体製造装置、電機などの輸出関連銘柄。特に、来年にかけて中国の景気回復が期待できるので、中国の売り上げが大きい銘柄は業績拡大が見込めます。もう一つは、内需のインバウンド関連銘柄。鉄道などの陸運が良さそうです。
――その他の狙い目は何でしょう。
中長期の投資テーマとして、「企業の変化」が注目できます。コーポレートガバナンス・コードの適用や、東証の市場改革などを通じて、質の高い企業を改めて見直そうという機運が高まっているからです。
その手掛かりになるのが自己資本利益率(ROE)です。ROEが高く、数値の改善が続いている企業は、設備や人への投資を増やしたり、株主還元を強化していたりする企業が多いのです。これは、新しい資本主義のビジョンとも重なっています。
(聞き手は市田憲司)
[日経マネー2022年9月号の記事を再構成]
からの記事と詳細 ( 短期は円安メリット追う 中長期でROE改善企業に注目 - 日本経済新聞 )
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