滋賀県が会員制交流サイト(SNS)に保有している公式アカウントが約130個にのぼっている。約4年にわたって更新されずに放置されているアカウントもあり、県は今年1月、長期にわたって更新のないアカウントは削除するよう運用を見直した。自治体のアカウントは部局ごとに作ることが多く乱立しがちで、同様の事例は全国で散見される。一方で、災害時の情報インフラとして重要な役割を果たすこともあり、効果的な発信で人口よりも多いフォロワーを獲得したケースもある。自治体SNSの理想的な運用方法とは。
更新滞るアカウント
滋賀県が保有するアカウントは今月3日時点で、ツイッター20個、フェイスブック38個、ユーチューブ(動画配信サイト)41個、インスタグラム(写真共有アプリ)22個、ライン6個-など。県の各部局がそれぞれにアカウントを取得している状況だ。
県公式イメージキャラクター「うぉーたん」のツイッターは、県内の新型コロナウイルスの感染状況などを毎日発信。3日時点で約3万9千人のフォロワーを抱える。ユーチューブの県公式チャンネル「shigakoho」でライブ配信される定例記者会見を事前予告するなど、頻繁に更新されている。
ただ、こうした人気アカウントばかりではない。たとえば県選挙管理委員会のツイッターは平成30年6月の前回県知事選の投票啓発に関する投稿を最後に、今月3日まで約4年間、更新されていない。
県情報政策課によると、SNSにおける県の公式アカウントは各部署が同課に利用届を出して取得している。長期にわたって更新されないケースもあるため、県は1月27日、SNS利用に関するガイドラインを改定し、6カ月以上情報の更新がないアカウントについては削除するよう各部局に方針を示した。
ただ、同課の担当者は「あくまで発信頻度と内容に関するガイドラインであり、アカウント数を制限するものではない」と強調。部局ごとにアカウントを保有する利点として「アカウントごとに細かく情報を発信できる」としている。
特徴に応じて効果的発信を
SNSの活用に詳しいウェブメディア評論家の落合正和氏は、自治体の公式アカウントについて「絞り込み、住民を困惑させないことが重要だ」と指摘。「部局ごとにアカウントを運用すると、住民はどのアカウントから情報を収集すればよいかの判断が難しくなり、結果的に各アカウントのフォロワーも分散してしまう」と説明する。
乱立によって管理が不十分になると、投稿数が極端に少ないアカウントも生じてしまう。SNSには独自の「アルゴリズム」(計算手法)があり、ユーザーが共有した内容などをもとに重要と推測される情報を表示するが、投稿数が少ないと「重要ではない」と判断されて表示されにくくなる。アカウントの価値が下がり、フォロワーも増えにくくなり、結果として情報が届きにくくなるという。
落合氏は「SNSでの情報発信において、複数のアカウントから発信するメリットはない」と言い切る。
一方で、ターゲットを絞ったSNSに効果的な発信を集中させ、魅力を向上させている自治体もある。高松塚古墳やキトラ古墳など歴史的な史跡や宮殿跡などが多くある奈良県明日香村は昨年2月から、インスタグラムで公式アカウントを本格始動させた。
月1回の生配信「インスタライブ」や投稿から24時間後に消える「ストーリーズ」を含め、週平均3回の投稿を心がけているといい、2カ月に1回、フォロワーやコメント投稿者にイチゴなどの地場産品を贈る事業も展開。1年間でフォロワーは約7倍の7705人(今月3日時点)に増え、村人口(5373人、今月1日時点)よりも多くなった。
明日香村によると、ターゲットは主に20~30代の女性。昔懐かしい風景に限らず、野に咲く花やおしゃれなカフェメニューなど「映え」を意識した写真も投稿している。「新型コロナウイルス禍で訪れてもらうことも難しい今だからこそ村の魅力を発信し、収束した際に旅先として選ばれる存在になりたい」(担当者)と意気込む。
落合氏は「自治体側もただ『作業』として発信するのではなく、民間企業と同様に、それぞれのSNSのアルゴリズムやユーザーの特徴、文化を理解して発信することが大切だ」と説いている。(佐藤祐介)
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