
これまで現金か銀行口座振り込みしか認められていなかった給与支払いが、スマホ決済やプリペイドカード、電子マネーなどで支払えるようになる「給与のデジタル払い」解禁が議論されている。厚生労働省の分科会などで議論されており、この春解禁という一部報道も出てきた。 【図解】破綻時にスムーズに早期返済を可能にするため、保証会社を介するスキームが検討 この給与デジタル払いが可能になると、企業側、労働者側にはどんなメリットがあって、どんな課題があるのか。Fintech協会が行った会見では、「さまざまな働き方が広がる中で、給与の支払い方法も多様な方法が求められる。それをテクノロジーで実装できるのではないか」(Fintech協会常務理事の神田潤一氏)とされた。 さまざまな働き方とは、副業や非正規労働者、外国人労働者などを指す。定期的な給与払いがある正社員とは違い、副業や非正規労働の場合、働いてから銀行振込までの期間が長いなどの制約があった。また外国人労働者の場合、営業時間や言語の壁があり、銀行口座の開設が難しい場合もあった。 給与のデジタル払いが可能になると、「少額で短期の入金がリアルタイムで可能になるかもしれない。そして、それをそのままキャッシュレスで使えるようになる」(Fintech協会常務理事の堀天子弁護士)。 海外では、給与専用の受け取りプリペイドカードは「ペイロールカード」と呼ばれ、ウーバーの労働者などが支払いを受ける際に使われている。銀行口座を持てない人でも、金融サービスを受けられるようにする、いわゆる金融包摂の文脈でしばしば言及されてきた。 実は給与デジタル払いに先行して、経費精算を銀行口座への振り込みではなく電子マネーなどで払う動きはすでに始まっている。企業側から見ると、専用の振込ソフトを使う銀行振り込みに比べ、API経由で経費精算ソフトから簡単に支払えるほか、手数料を削減できるというメリットがある。結果的に、高頻度の支払いも可能になる。
給与デジタル払いの課題
一方で労働組合の団体である連合などが懸念を持っているのは、安全性の確保だ。スマホ決済や外貨送金事業者の口座に給与を振り込んだ場合、事業者の倒産などで、給与が受け取れないリスクがあるとされる。 スマホ決済や国外送金を行う事業者の多くは、資金移動業者と呼ばれ登録が必要だ。2020年末時点で80社が登録されている。資金移動業者が預かったお金は、その100%を法務局へ供託するなど、「倒産隔離され100%保全されている」(堀弁護士)。しかし、倒産の際には資金が早期に返済されることが重要になるため、間に保証会社を入れたスキームが検討されている。 また資金決済法が改正され、21年には資金移動業者が3つの類型に分かれる。現行と同じ100万円までの送金が可能な2種に加え、上限額のない1種、5万円までの3種だ。このうち、1種は厳しい滞留制限が課され、移動する資金の額と移動する日が明らかでなくてはならない。また2種でも、「100万円を超える預かりが発生している場合、(送金や決済などの)為替取引に関連するものか確認が必要になる。それが為替取引に関連するものでなかったら、払い出しが必要になる」(堀弁護士)といった制約が課される。こうした仕組みで、事業者の破綻の際にも給与資産が守られるようになる。 手数料についても配慮される模様だ。月に1回以上は口座から無料で出金できるよう、検討されている。これは「賃金の支払いに関する原則があり、労働者からの手数料受け取りは、原則としてできない」(堀弁護士)からだ。現在、資金移動業者の多くでは出金に対して手数料を取っている。 日本では、ほとんどの国民が銀行口座を持ち、正規雇用については給与の定期払いが一般的なため、デジタル払いによるインパクトはそれほど大きくなさそうだ。一方で、非正規労働者の給与については、昨今給与の前払いサービスも使われ始めており、リアルタイムに給与が振り込まれるようになれば、普及の可能性も大きいだろう。 またPayPay、LINE Pay、メルペイなどといったスマホ決済事業者にとっては、給与をサービスの残高として扱えるようになれば、サービスの価値が高まることになる。 給与のデジタル払いは法律の改正は必要なく、施行規則の省令改正で実現できる。パブリックコメントの実施は必要になるが、「国会を通す必要はなく、厚労省が案を決めて開始したあとは順次施行となる」(堀弁護士)見込みだ。
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