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Thursday, May 12, 2022

第二会社方式とは?メリット、スキーム、支援制度、事例を解説 - ビズリーチ・サクシード

第二会社方式とは、会社分割などの手法によって継続見込みがある事業を切り離し、その後に清算によって既存会社を消滅させる事業再生のスキームです。第二会社方式のメリットやスキーム、事例をくわしく解説します。

第二会社とは

目次
  1. 第二会社方式とは
  2. 第二会社方式のメリット
  3. 第二会社方式のデメリット・問題点
  4. 第二会社方式で用いられるスキーム
  5. 中小企業再生支援協議会による事業再生の支援
  6. 第二会社方式の事例
  7. まとめ

第二会社方式とは

第二会社方式とは、債務超過に陥った企業の事業継続の見込みのある事業を後述する会社分割事業譲渡といったスキームを用いて別の法人格の会社に切り離すとともに、事業分離等を実施した後の既存の会社を清算手続きにより法人格を消滅させる方法となります。

見込みのある良い事業だけを残して、不採算の事業については清算するという方法であるため、現事業のうち、good事業を選び出せるかがポイントとなります。

第二会社方式のメリット

第二会社方式を用いるメリットとして主に3つあります。それらについて解説していきます。

第二会社方式メリット

優良な事業だけを残すことで、事業再生を実現しやすい

第二会社方式を用いた場合、不採算部門は既存の会社に残して優良な事業だけ新会社に引き継いで新たに事業を開始します

不採算部門に関連する過剰な債務に関しては既存事業に残すことで余計な債務をカットすることができ、事業再生を進めやすくなります。
また、第二会社方式を用いると赤字事業について切り捨てることができるため、資金等も余計なところに投入する必要もなくなり、優良事業に経営資源を集中することができます。

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税務面での恩恵が大きい

債務免除を行なった場合、債務者は免除益を計上することになり、それまでの繰越欠損金があったとしても法人税の負担が生じる可能性があります。
一方、放棄した債権者側も寄付金に認定されることで放棄した債権を損金に算入できないことが想定されます。

これらの問題点を解決するのが第二会社方式で、タックスプランニングを行った上で第二会社を利用した場合、既存の法人(不採算事業が残った会社)を特別清算することで債務免除益などを回避することができます。

債権者にとっても第二会社方式を利用した協定型の清算手続を行うことで債権額を損金に算入することができるようになるため、債権者とも交渉がやりやすくなります。

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スポンサーからの協力を得やすい

第二会社方式を用いた場合、優良事業のみが引き継がれ、不採算部門で生じた偶発債務や簿外債務について引き継ぐことはないため、不良債権を引き継ぐリスクを遮断することができます

また、第二会社方式を用いた場合、先述の税務上のメリットもあるため、スポンサーにとってメリットが大きく、協力をしやすい方法となっています。

第二会社方式を用いると、良い状態からリスタートすることができ、税務上のメリットも得られるため、スポンサーにとっても協力しやすい方法となります。

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第二会社方式のデメリット・問題点

第二会社方式を用いるデメリットや問題として主に3つあります。それらについて解説していきます。

第二会社方式 デメリット

許認可を必ず取得できるとは限らない、取得にコストや時間がかかる

第二会社方式を用いた場合、必ずしも許認可がそのまま承継されるとは限らず、新たに許認可を取得する必要がある可能性があります
新たに許認可を取得するには申請を進めるためのコストや申請に時間がかかります。

また、承継できる許認可もありますが、承継にはコストや時間がかかることがあります。

そのため、第二会社方式で許認可を承継する可能性がある場合には事前に調査して、取得までのコストや時間について把握しておきましょう。

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不動産の移転や会社の新規設立でコストが発生する

第二会社方式を用いて新会社に不動産などを移転させる場合、新規の不動産の取得となり不動産取得税などの税金が発生します。
また、新会社を設立するにあたっても
登録免許税や収入印紙などのコストが発生することになります。

第二会社方式を用いた場合にはこのようなコストが生じてしまうため、留意しておく必要があります。

資金調達を行える可能性が低い

第二会社方式を用いた場合、新会社と旧会社は同じ会社と見られるため、それまで融資を受けていた金融機関から追加の融資を受けることは難しいと考えられます。

第二会社方式を用いるのであれば、スポンサーを事前に見つけておかないと資金調達が難しく、厳しい状況に追い込まれる可能性があります。
第二会社方式を用いた場合でも資金調達を行える可能性は低いので、新たな資金調達先を見つけた状態でスタートさせましょう。

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第二会社方式で用いられるスキーム

第二会社方式では「会社分割」と「事業譲渡」の2つのスキームが用いられます。
それぞれのスキームについて概要、メリット、デメリットなどを解説していきます。

会社分割

会社分割

第二会社方式で用いられる会社分割は、旧会社の中から新会社に引き継ぎたい優良な事業を切り出して包括的に新会社に引き継がせる方法となります。

会社分割では包括承継となり、個別の合意が必要とならないため、契約関係の引き継ぎなど手続きに手間がかからないというメリットがあります。
また、会社分割では
消費税が非課税となり、登録免許税や不動産取得税の軽減措置を受けることができるメリットもあります。

一方、包括承継であるため、必要な契約はもちろんですが不要な資産や負債も承継してしまうことになります。
そのため、簿外債務を引き継ぐ可能性があります。

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事業譲渡

M&Aの種類

第二会社方式で用いられる事業譲渡は、旧会社の中から新会社に引き継ぎたい資産や契約などを切り出して新会社に引き継がせる方法となります。
それぞれの債権や債務を個別に合意した上で引き継いでいくことになります。

新会社は契約で明記された債務以外に引き継ぐことがないため、簿外債務を引き継ぐことがないことがメリットとなります。
また、個別に資産や負債を引き継ぐため、
必要なものだけを引き継がせることができることもメリットです。

一方、事業譲渡は売買となるため、消費税が課されることになります。
また、会社分割では受けることができた
税負担の軽減措置も事業譲渡ではありません
これらが事業譲渡のデメリットとなります。

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中小企業再生支援協議会による事業再生の支援

中小企業再生支援協議会について解説していきます。

中小企業再生支援協議会とは

中小企業再生支援協議会[1]は、中小企業の再生に向けた取り組みを支援するため、産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法に基づき、各都道府県に設置されている公正中立な公的機関となります。
全国47都道府県に設置されており、商工会議所等が中心となり、運営されています。

なお、2022年4月1日に中小企業再生支援協議会は経営改善支援センターと統合され、中小企業活性化協議会[2]に名前が変わっています。

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第二会社方式による事業再生に対する協議会の支援内容

平成21年に施行された産業競争力強化法の規定に基づく「中小企業承継事業再生計画」を作成し、国に認定してもらえた場合に支援が受けることができます。
中小企業再生支援協議会では事業再生に向けて支援を行なっており、
上述の再生計画の策定支援や関係機関との調整などを行なっています。

第二会社方式による事業再生においては、過大な債務を抱えているなど、財務状況が悪化し、事業の継続が困難となっているが、収益性のある事業を有する中小企業を支援しており、主な支援内容は以下のとおりとなっています。

  • 営業上必要な許認可を承継
  • 税負担の軽減
  • 金融支援

特に金融支援については、日本政策金融公庫の特別融資や中小企業信用保険法の特例、中小企業投資育成幹部指揮会社の特例を使った融資について支援を行っており、第二会社方式を用いた場合に問題となる資金について支援しています。

なお、「中小企業承継事業再生計画」の新規の受付は平成30年3月末で終了しています。
現在は新たに発足した中小企業活性化協議会において業務が引き継がれており、
コロナでの資金繰り支援の継続中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジに向けた支援を行っています。

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事業再構築補助金とは?要件や補助額、対象経費を徹底解説

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[1] 中小企業庁支援策のご案内(中小企業庁)
[2] 中小企業活性化協議会(中小企業庁)

第二会社方式の事例

第二会社方式の事例について紹介していきます。

【アミューズメント業界】芝政観光開発株式会社の第二会社方式による事業再生

企業概要

本社は福井県坂井市にある北陸有数のレジャー施設である「芝政ワールド」を運営していた芝政観光開発株式会社です。[3]

事業再生が必要となった経緯

1980年代にジャンボプールのオープンを皮切りに博物館、室内温水プールなどを開設し、北陸地方有数のレジャー施設として認知されていたが、バブル崩壊により来場者数は急減し、2000年4月期には売上高はピーク時の約3分の1まで縮小しました。
1997年以降福井銀行から元金返済猶予等の金融支援を受けていたが業況の回復に至らず、抜本的な事業再建が必要となりました。

事業価値の棄損を回避しつつ、透明・公正な手続きを担保した上で、企業再生支援機構への支援が申し込まれました。[3]

第二会社方式の流れ

新たに100%出資の子会社を設立し、新会社の株式を全て企業再生支援機構に対して譲渡した後に、「芝政ワールド」事業及び同事業に関連する資産・負債を新会社に承継させる会社分割を実施するという方法で実行されました。[3]

経営者責任

経営者責任として取締役と監査役は全員退任し、役員退職慰労金は放棄されました。
また、株主責任として残余財産の分配はなしで、旧会社の株式価値をゼロにすることで責任を履行されました。[3]

【照明器具業界】ヤマギワ株式会社の第二会社方式による事業再生

企業概要

本社は東京都中央区にある照明器具業界でも「高度な照明ソリューション」を提供していたヤマギワ株式会社です。[3]

事業再生が必要となった経緯

赤字事業であった店舗事業からの撤退が遅れたこと、建築市場における需要の低迷や価格圧力の高まりによる収益力の低下等から財務内容が悪化、また、開発部門と営業部門の連携欠如から商品・市場戦略の転換が遅れたことで過剰な有利子を抱えたことで事業再生が必要となりました。

また、管理面においても過剰な在庫が問題となり企業再生支援機構への支援の申込に至りました。[3]

第二会社方式の流れ

会社分割を用いた第二会社方式で新会社と旧会社にヤマギワ株式会社を分離した上で、旧会社の遊休不動産を売却されました。
売却代金は負債の返済に充当され、返済しきれなかった残債務については特別生産等の法的整理により処理されました。[3]

経営者責任

経営者責任として取締役と監査役は全員退任し、役員退職慰労金は放棄されました。
また、株主責任として残余財産の分配はなしで、旧会社の株式価値をゼロにすることで責任を履行されました。[3]

[3] 再生支援案件 事例集(株式会社企業再生支援機構)

まとめ

ここまで第二会社方式について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

私的整理に至った場合にはさまざまな方法で企業再生を進めますが、その中でも第二会社方式を用いると優良事業だけを承継させ、偶発債務などは引き継ぐことがないため、スポンサーなどの支援を受けやすい方法となります。
第二会社方式を用いるのであれば、内容を理解した上で、デメリット等に留意して進めましょう。

(執筆者:公認会計士 前田 樹 大手監査法人、監査法人系のFAS、事業会社で会計監査からM&Aまで幅広く経験。FASではデューデリジェンス、バリュエーションを中心にM&A業務に従事、事業会社では案件のコーディネートからPMIを経験。)

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