ブレーキはフルードによって圧力を伝えてパッドを押し付けている。このフルードの粘性などによって、ブレーキのフィーリングも効き方も変わる。最新のクルマに合わせたフルードなら乗りやすさも高まる。
◆ブレーキフルードはオイルではない
ブレーキオイルとも呼ばれるブレーキフルード。成分的にはオイルとは異なる。エンジンオイルは摩擦を低減したりするのが主目的だが、ブレーキフルードは圧力を伝えるのが役割。
ペダルを踏み込むとその先にあるマスターシリンダーが押される。マスターシリンダーは注射器のような構造でブレーキフルードを圧送する。配管を取ったフルードはキャリパー内でピストンを押し出すことで、ブレーキが効く仕組みだ。
ブレーキフルードはドライバーがブレーキを踏んだら瞬時にピストンまで圧力を伝えなければならないので、ドロドロでは具合が良くない。ある程度流動性が高くないといけない。
しかし、キャリパー内やタイヤハウス内では非常に高温になる。そのときにフルードが沸騰してしまうと気泡が生まれる。気泡は空気なので潰れやすく、ブレーキを踏んでもペダルが奥まで入るだけで、全然効かなくなってしまう。これが「ベーパーロック」と呼ばれる現象だ。それを防ぐためにブレーキフルードは沸点が高くなっている。
◆ドライ沸点とウエット沸点とは!?
スポーツ走行向けのフルードだとドライ沸点260度、ウエット沸点180度のような表記がされている。ドライ沸点とは完全に乾燥した状態での沸点で、いわば理論上の沸点。ウエット沸点は空気中の湿度などを加味したときの沸点で、事実上の沸点はこちらになる。なので、ドライ沸点がいくら高くてもあまり関係がなく、実際に使うときにはウエット沸点が重要になる。
そこで登場するのがDOT規格。アメリカ交通省(Department of Transportation)の略がDOTで、日本で言うところのJIS規格のような品質を比べるための統一した基準。
数字が大きいほど高性能で、純正フルードは多くの場合DOT3で。ドライ沸点205度以上/ウエット沸点140度以上。スポーツ走行にもよく使われるDOT4規格はドライ沸点230度以上/ウエット沸点155度以上。レースや連続周回でも使われるDOT5.1規格はドライ沸点260度以上/ウエット沸点180度以上と定められている。
ちなみにDOT5ではなくDOT5.1が多いのはその成分に理由がある。DOT3/4はグリコールが主成分。DOT5はシリコンが主成分と定められていて、グリコールとシリコンは絶対に混ぜてはダメ。なので、入れ替えて使うにはグリコールが主成分でDOT5相当の性能を持つDOT5.1が都合が良いので、多くの場合DOT5.1が使われているのだ。
一方、DOT規格を取得していない製品もある。この規格は絶対ではなく、そういった規格に多くの製品が適合しているというだけ。さまざまな条件があるのであえて取得しないことでコストを抑えている製品もある。そういった製品の場合には、ウエット沸点でその性能を確認してもらいたい。
◆最新のクルマに対応したフルードもある
現代のクルマはABSだけでなく、さまざまな姿勢制御が採用されている。姿勢制御は一瞬の間に1輪にだけブレーキを掛けたりしている。その素早い姿勢制御による圧力を、極めてタイムラグなく伝えるために作られた規格がClass6。
スポーツ走行時にはこの姿勢制御が走行の邪魔をすることもある。コンピュータ側でカットしたいが、カットできない場合もある。そこでこのフルードを使うと、姿勢制御の対するレスポンスが良い。レスポンス良く作動したほうが、姿勢制御からの回復も早く、乗りやすくなる。カットできないなら、できるだけ使いやすくしようということである。
各メーカーともにサーキット走行用には電子制御との共存をするならClass6規格のフルードを推奨。電子制御をカットできるなら、ペダルタッチなどは、これまでのDOT5.1などのレーシングフルードの方が良いと言われている。
フルードをスポーツフルードに交換すると、普段乗りでもペダルタッチに剛性感が出て、思い通りにコントロールできるようになる。そうなると乗っていて楽しくなる。信号で停まるときにも「あー信号に引っかかっちゃった」というよりも、「またブレーキを踏めて気持ちいい」と思えるのがブレーキチューンのメリット。まずはフルード交換からぜひ体感してもらいたい。
★~カスタムHOW TO~は毎週火曜日&土曜日6:30掲載です
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