最近巷でNFTアートが人気を集めています。NFTアートとは何なのか(あるいはそもそもNFTとは何なのか)、この人気の理由は何なのか、今後どのようなことが起こり得るのか見ていきたいと思います。
盛り上がるNFTアート市場
Hashmaskでデジタルアートが約8000万円で販売されたり、オークションハウスChristiesでアーティストBeepleのNFT作品が75億円で落札されたりと、かなり浮世離れしたNFTアートの話題が連日飛び込んできます。いままでNFTのニュースはブロックチェーン業界に閉じたものが多かった印象ですが、最近ではダミアン・ハーストのような世界トップのアーティストたちもNFTアートへの参加を表明しており、その影響は大きく広がってきています。
このブームの要因はさまざまあると考えられます。まずは暗号通貨自体の価格高騰です。特にイーサリアムの急騰(2020年7月時点1ETH = 約3万円だったものが、21年4月には20万円強)により、同じイーサリアム上のトークンでありイーサリアムネットワーク上でやりとりされることの多いNFTの需要も上がったと考えられます。
また、Dapps(分散型アプリケーション)や分散型取引所の数が増え、ユーザー体験も改善していったことにより、ブロックチェーンの知見が少ないクリエイターや買い手への間口が広がったことも起因しているでしょう。さらには、COVID-19のまん延によりそれまでのリアル空間でのエンターテイメントが制限され自然とデジタルコンテンツへの関心が高まっていたことも追い風だったのかもしれません。
このようにNFTへの関心の土壌ができ上がったタイミングで、NBAなどの多くのビッグコンテンツがマーケットに参入したことで爆発的な人気につながったのでしょう。このNFTブームをバブルと危惧する人も多くいます。確かに投機的な取引が多いのも事実です。しかしながらNFT自体は革新的な技術であり、アートをはじめとしたコンテンツマーケットに今後も大きく貢献するでしょう。
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NFTとは何なのか
そもそもNFTとは何なのでしょうか。NFTはノンファンジブルトークン(代替不可能な財)の略称です。そもそもトークンとは、ブロックチェーン上で記録された電子証票(デジタルの証券、手形、登記簿のようなもの)のことを指し、ブロックチェーンの特性上改ざんやコピーが極めて困難です。
このブロックチェーン上のトークンは、その性質によってFT(ファンジブルトークン)とNFTに分かれます。FTはビットコインなどの暗号通貨のように一つ一つにユニーク性はなく、その数量が価値や価格の大きさに比例します。その財自体の数量が制限・コントロールされることで、FTは財としての価値をもちます。
一方でNFTはそれぞれ財が固有の性格をもち、他の財とは代替することのできない財であり、ブロックチェーンゲーム内でのキャラクターなどがその例です。
一般的に、NFT上にコンテンツの情報(データが保存されているサーバのURLやデータを暗号化した文字列など)を書き込むことで、コンテンツとNFTとを1対1にひも付けることができます。NFTにひも付けられたコンテンツも含めてNFTと誤解されることが多いのですが、NFTはあくまでもブロックチェーン上のトークンであって、そこにひもづけられたコンテンツとは別物なのです。
コンテンツ自体はゲームのキャラクターでもデジタルアートでも普通のデジタルデータ(png、gif、movファイルなど我々が普段触れているようなデータファイルです)であって、これ自体は簡単に複製ができてしまいます。しかしながらNFTとひも付けられることで、そのコンテンツに関する権利を主張できるようになるのです。
したがって、NFTアートという場合は、デジタルアートにNFTがひも付けられたものと理解するのが正しいでしょう(筆者の所属するスタートバーンのStartrailのように、リアルアートをNFTとひも付けているケースもあります)。
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NFTのメリット
デジタルコンテンツをNFTとひも付けることで得られるメリットは大きく3つあります。
まずはコンテンツの一意性です。前述したように、コンテンツの権利を一意に主張できるようになります。NFTとデジタルコンテンツとを結びつけることで、デジタルコンテンツに一意性・唯一性を付与し、「確かにこのコンテンツの持ち主があなたである」ことを簡単に証明できるようになるのです。
従来、複製が容易なデジタルコンテンツを権利保護しながら流通させるためには一定のコストがかかっていました。コピーガードや電子透かしなどがその例です。結果その流通コストに見合わない低価格のコンテンツはなかなか市場で流通されないのが現状でした。
しかしNFTを使えばデジタルコンテンツの所有を証明できるので、そのような権利保護の仕組みの必要性が下がり、結果として流通コストを抑えることができます。また、複製が容易にできるデジタルコンテンツはリアルコンテンツと比べてどうしても低い価格でやり取りされがちですが、NFTによりデジタルコンテンツの一意性が担保されるため、コンテンツ自体の価値も上がりやすくなります。
次に相互互換性です。今までデジタルコンテンツは各サービスやプラットフォームに閉じていました。あるゲームで購入・獲得したキャラクターはあくまでもそのゲーム内でしか利用できませんでした。しかし現在NFTのほとんどはイーサリアムのブロックチェーン上に記録されており、イーサリアムに接続しているサービスであればサービスを横断してコンテンツを取引可能です。
例えばあるECサイトで購入したデジタルアートを、他のマーケットプレイスで二次販売できるようになります。NFTの技術により、このようなプラットフォームに左右されないコンテンツ中心のマーケットが実現できます。
最後はプログラマビリティです。イーサリアムのスマートコントラクト(ブロックチェーン上で契約を自動的執行できる仕組み)という機能を用いることでさまざまな機能をNFTにもたせることができます。マーケットプレイスなどの仲介サービスに頼らずとも、ブロックチェーンに記録された情報をもとに契約やルールセットを実行してくれるのです。
その例として、コンテンツが二次流通された際に収益の一部を著作権者に返す還元金の仕組みがあり、実際にそのような機能が実装されているNFTマーケットプレイスも出てきています。サービスをまたがったとしても、NFTがAさんからBさんにいくらで販売されたという情報と、最初に設定された還元金率に基づいて、著作権者に還元金を自動で支払うことが可能になります。
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NFTアートの価値
一般的にはデジタルアートとNFTをひも付けたものがNFTアートと呼ばれています。現行のアートの世界では取り扱われる作品のほとんどが一点物であるため、NFTによって与えられるデジタルコンテンツの一意性は、特に重要になってきます。リアルアートに比べて簡単に複製できるデジタルアートはその希少性を担保することが困難でしたが、NFTの技術により「一点物のデジタルアート」が実現可能になるのです。その結果、美術品としての価値も向上し、必然的に投資財としての魅力度も高まっていくと言えるでしょう。
さらには、今後NFT・ブロックチェーンの技術を用いてアート作品の活用の幅はさらに広がっていくと考えられます。アート作品の権利関係(著作権やその利用権など)がブロックチェーン技術で明確化されることで、いままで運用が煩雑であったアート作品の版権利用、特にはデジタルデータの活用がより活発化するでしょう。
それはデジタルアートに限らず、リアルアートにも大きな影響を与えます。倉庫で眠っていたアート作品のデジタルスキャンデータを美術館の展示用に貸し出し、そこから収益が得られ、さらにその収益の一部が自動で元の作家にも還元される——といったことも、作家が作品の版権利用に関する規約を設定しブロックチェーンに記録することで実現可能になるのです。
このようにNFTの技術により、アート作品のマーケット価値が向上されるだけではなく、美術品としての体験の幅も大きく広がることが期待されます。
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今後のNFTマーケット予想
ブーム真っただ中のNFTまたはNFTアートですが、今後どのような展開が待っているのでしょうか。
現状NFT取引の多くが投機目的だと考えられていますが、このような面白いニュースは今後も引き続き盛り上がりをみせるでしょう。とはいえ最近の異常なまでの価格高騰はあと数カ月から1年の間に収束すると思います。
収束の要因は、デジタルコンテンツの著作権問題(自身が著作権を持っていないコンテンツに対してNFTを発行してしまう、購入したNFTコンテンツを無断で版権利用してしまう、など)や秘密鍵の紛失(NFTの取引には秘密鍵という一種のパスワードのようなものが必要になるが、再発行が不可能なので紛失するとブロックチェーン上の自身の資産にアクセスできなくなってしまう)、本人確認の難しさ(デジタルの世界で本当に作家本人が発行したNFTなのか特定が難しく、偽物が発生する可能性がある)、などさまざま可能性が考えられます。
しかしNFTマーケットが完全になくなるのではなく、こういった問題への対応策の整備が進むことで、取引も増え価格も安定し、着実にマーケットが形成されていくのではないでしょうか。
さらに他の技術と融合することでNFTは我々の生活に大きな影響を及ぼすでしょう。その1つの例がVRやAR技術です。VRやARが発達しリアルと見間違えるようなデジタル空間ができるようになると、現実世界での一点もののアートと同様にVR空間で一点もののNFTアートを鑑賞することが当たり前になります。このようにしてあらゆるコンテンツがNFTに登録されるようになると、NFTにひも付いていないコンテンツだと、ユーザーも不安になるような世界が思いのほかすぐ来るかもしれません。
筆者プロフィール:太田圭亮(おおた けいすけ)
スタートバーン執行役員 事業開発部長 兼 広報/PR室管掌。東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修了。卒業後はスイスの建築設計事務所Herzog & de Meuronで建築家として、美術館やファッションブランドショップの設計に従事。2015年に経営戦略コンサルタントに転身し、ベイン・アンド・カンパニーの東京およびドバイ支社で大手企業の経営支援に携わる。2019年にスタートバーンに参画し、デジタル技術に関わる事業をはじめとして各事業を牽引している。
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からの記事と詳細 ( NFTアートの価値とは? 知られざる3つのメリット - ITmedia )
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