在籍していた時には気付かなかった勤め先の魅力を、離職後再発見して「もう一度働きたい」と思うこともあるだろう。
では実際のところ、離職後の再入社率はどれくらいで、また、再入社者にはどのような業務や人間関係に関するメリットがあるのだろうか?
そんな「離職者との繋がり」に関する意識調査がこのほど、離職者2000人、再入社者300人を対象として実施されたので、その結果を紹介していきたい。
「アルムナイ経済圏」の規模
離職後、「元在籍企業」や「元同僚」と行った経済的取引の範囲を「アルムナイ経済圏※」と定義すると、その規模は年間1兆1500億円に上ることが明らかとなった(図表1)。
※「アルムナイ経済圏」はパーソル総合研究所による造語。離職者による元在籍企業・元同僚との取引範囲を意味し、その規模は、①元在籍した企業と現在在籍中の企業との取引(B2B)、②元在籍企業と離職者個人との取引(B2C)、③元在籍企業で同僚だった者との取引(B2B並びにB2C)の合計値を意味する。
「アルムナイ経済圏」の市場規模推計値は、「①年間の離職者数(パートタイム除く一般労働者)」から「②非自発的な離職(事務所側の理由・定年など)を除き、「③離職者一人当たりの年間取引額」をかけて求めた。①と②は平成29年雇用動向調査結果、③はパーソル総合研究所調査より、業界割合調整済の数値を用いた。
「アルムナイ経済圏」のうち、「元同僚」との取引を除き、「元在籍企業」との取引に限定した「狭義のアルムナイ経済圏※」の規模は、年間4,400億円となる(図表1)。
※離職者による元在籍企業との取引範囲を意味し、その規模は、①元在籍企業と現在在籍中の企業との取引(B2B)、②元在籍企業と離職者個人との取引(B2C)の合計値を意味する。
図表1.アルムナイ経済圏の規模
購入者や評価者としての離職者
離職者が個人ユーザーとして、元在籍した企業の商品・サービスを1年のうちに利用・購買している割合は10.8%(図表2)。
図表2.元在籍企業との企業取引・個人取引の割合
離職者が元在籍企業の商品・サービスを勧めるかどうかを見ると、ポジティブな説明が12.5%、ネガティブな説明が13.2%と概ね拮抗する結果となった。元在籍企業への入社を人に勧めるかどうかを見ると、ポジティブな紹介が4.0%、ネガティブな紹介が4.3%と、こちらも概ね拮抗する結果となった。
しかし、会社の口コミサイトでは、ポジティブな書き込み4.8%、ネガティブな書き込み35.6%と、圧倒的にネガティブな書き込みが多くなる(図表3)。
図表3.元在籍企業に対する評価
元在籍企業と良好な関係を築いている離職者(アルムナイ意識が高い層)では、ポジティブな評判を広めやすく、元在籍企業との取引・利用が起こりやすいことが確認できた(図表4)。
※「アルムナイ意識」は、協働意欲・交流意欲・顧客化志向の合計平均値で指標化。
図表4.「アルムナイ意識」の高低による評判の差
離職した企業への再入社
離職後に再入社できる公式な制度(再入社制度)を設けている企業は8.6%。従業員5,000人以上の企業では20.2%と、従業規模が大きい企業から整備されている(図表5)。
図表5.離職者向けの制度・施策(全体平均と5,000人以上比較)
離職した企業への再入社の意向をみると、再入社したい人は8.3%いる。実際に過去5年以内に再入社した人は約2.1%だった(図表6)。
図表6.再入社意向と実際の再入社率
再入社した人のうち、公式な再入社制度を利用したのは4.0%。整備は徐々に進んできているものの、現状では再入社者の75.7%が人づて・縁故などの非公式なルートで再入社していることがわかった(図表7)。
図表7.再入社者の経路
再入社者のメリットとして、「仕事内容が事前にイメージできた」(42.7%)、「組織内のキーパーソンが理解できている(37.7%)など、比較的スムーズに業務を進められる様子が伺える(図表8)。
図表8.再入社者のメリット
再入社後の満足度は総じて離職時よりも高まっているが、「給与・報酬・評価への満足度」だけは離職時より微減する(図表9)。
背景として、離職時と再入社後の処遇を比較すると、大企業(従業員1,000人以上)では 「年収低下」(32.9%)や「職位低下」(17.7%)など、再入社者を低く処遇する傾向がみられることが考えられる(図表10)。
図表9.退職前と再入社後の満足度
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図表10.従業員規模別の処遇
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■分析コメント~企業は離職者と良好な関係を築き、メリットを享受すべき~
コロナ・ショックによる産業構造の転換と終身雇用モデルの崩壊により、今後、離職や転職が各所で起こってくることが見込まれている。
一方で、コロナ禍の前から大手企業を中心に「自らの組織を離れた従業員」との関係性のあり方を見直す動きが活発化している。
企業を去った従業員をぞんざいに扱ってしまえば、企業ブランディングは大きく毀損するし、逆に、良好な関係を築ければメリットが大きい。人口減少社会である日本では、こうした「離職者との良好な関係の継続」はますます重要になってくる。
そうした企業と離職者との繋がり=良好な「アルムナイ」がもたらすメリットは、採用(再入社による自組織以外の人脈・知見の獲得、採用コスト削減)、ブランディング(ポジティブな評判獲得、ネガティブな評判防止)、顧客化(購入者や取引先となる可能性)、ビジネス上の協業関係など多岐にわたる。
アルムナイとのリレーション構築のための施策は、再入社制度の整備、離職者向けSNSやコミュニティ整備、交流イベント、優待サービスなどによるアルムナイ意識の醸成、再入社後の公正な処遇、不安を減らすマネジメントなど様々だ。今後は、離職者を裏切り者とみなすことなく、こうした総合的な手を積極的に打っていく企業が、人材を惹き付けていくだろう。
また、見逃されがちだが、退職時の面談の影響力は大きい。上司面談において、単に退職意思を尊重するだけでは、離職者心理にネガティブな影響を与えており、「思いの引き出し」が必須であることが明らかになった。こうした細やかなコミュニケーションに気を配れるかどうかが、離職者との長い信頼関係を築くための分かれ道となるだろう。
<調査概要>
調査名称:パーソル総合研究所 「コーポレート・アルムナイ(企業同窓生)に関する定量調査 」
調査目的:離職後の元いた企業との関係性の在り方を明らかにし、企業・離職者が互いに有効な関係を継続させることにより、双方にどのようなメリットを享受できるかを探る。
調査手法:調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
調査時期:2019年12月20日-24日
調査対象者:
〈共通条件〉
居住地域:全国 年齢:20歳以上50歳未満
・企業規模:10人以上 / 公務員・士業、第一次産業は除く / 資本:内資・外資不問
合計サンプル数 2300人
・離職者2000人 5年以内に離職経験者:性年代ごとに250サンプルずつ回収
・再入社者300人 5年以内に出戻り入社の経験者(割付なし)
・当時の役職不問 在職期間3ヶ月以上
※離職者の現在の雇用形態・就業状態は不問
実施主体:株式会社パーソル総合研究所
出典元:パーソル総合研究所
構成/こじへい
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June 21, 2020 at 04:06AM
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