
大切に抱かれた赤ちゃんの写真がある。別の写真は家族旅行か、お母さんと並んで歩く女の子が笑っている。もう一枚は桜の下で制服の少女がちょっとすましている▼カメラが趣味だったそうだ。だからこんなにお嬢さんの写真があるのだろう。一九七七年、北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの父、滋さんが亡くなった。八十七歳▼滋さんやおそらく、妻の早紀江さんも撮った写真の数々に、吉野弘さんの「一枚の写真」という詩を思う。<姉は姉らしく分別のある顔で/妹は妹らしくいとけない顔で>▼ひな祭りの日に父親が子どもの晴れ着姿を写真に収める光景である。こう続く。<この写真のシャッターを押したのは/多分、お父さまだが/お父さまの指に指を重ねて/同時にシャッターを押したものがいる/その名は「幸福」>▼めぐみさんを撮った滋さんの指の上にも「幸福」が重なっている。それを奪われた悲しみと取り戻すことができなかった悔しさ。胸がふさがる。赤ちゃん、女の子、少女と続く、その先の写真を撮らせてあげたかった。年頃になった女性。小じわのおばさんでもよい。そういうあたりまえのアルバムが滋さんにはない▼拉致被害者の家族が老いていく。解決を急がねばならない。四十三年、まな娘の姿を追い続けた。穏やかな顔をしたその人はあきらめなかった。きっと今も捜していらっしゃる。
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