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Tuesday, June 23, 2020

花王「メリット」がここまで末永く愛される理由 シャンプーに対する消費者意識は激変した - MSN エンターテイメント

メリットシャンプーの歴代パッケージ(画像提供:花王) © 東洋経済オンライン メリットシャンプーの歴代パッケージ(画像提供:花王)

 あなたは毎日、どんなシャンプーで髪を洗うだろうか。

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 「この商品しか使わない」と同じブランドにこだわる人もいれば、季節やそのときの気分、そして年齢などによってブランドを変える人もいる。後者は女性に多い。

 大型ドラッグストアやスーパーの店頭には、多くのシャンプーが並ぶ。現在は中身の詰め替えが中心なので、売り場には本体商品と詰め替え商品が林立している。

 こうしたシャンプーブランドの中で、一目置かれる存在がある。花王の「メリット」だ。

 発売は半世紀前の1970(昭和45)年。大阪で日本万国博覧会(大阪万博)が開催され、日本が高度経済成長を続けていた時代だ。一方、消費者のシャンプーやヘアケア(ここでは頭髪ケア)に対する意識は、現代とはまったく違っていた。これについては後述する。

 メリットは発売以来、50年続く人気ブランドだ。平成・令和時代になっても、2002年から2019年までの18年間で、累計販売本数は「6億本」を突破したという(インテージSRIシャンプー市場。2002年1月~2019年11月。メリットシリーズ累計販売本数)。

 なぜメリットの人気は続くのか。

 筆者はかつての花王在籍時に、シャンプーの歴史や、日本人のヘアケア意識の変化を調べたこともある。それらも紹介しつつ、ブランドの生き残りの視点で考察したい。

今でも「ベスト3」の一角を占める

 まずはシャンプー市場(消費者は女性が多い)の現状について、花王に聞いてみた。

 「シャンプーの売れ行きをブランド別に見ると、1位パンテーン、2位ラックス、3位メリットとなっています(※1)。ここ数年は変わっていません」

(※1)インテージSRIデータによる

 メリットのブランドマネジャーである仲田実沙希氏(花王ヘアケア事業部)はこう語る。欧米系のブランドに、日本系のメリットが続く――という構図だ。

 上位2ブランドも歴史が長い。メリットについて話してもらう前に、少し説明しよう。

 「パンテーン」(P&G)の日本発売は1991年で、今年で29年。アメリカでは1947年に別会社(リチャードソン・ヴィックス社)から発売されて以来、70年以上の歴史がある。1985年にP&Gが、経営が悪化した同社を買収。以後、自社ブランドとして積極展開する。

 国内では中位ブランドだった時期もあるが、近年は好調だ。今回こんな声も聞いた。

 「かつてはサロン系ブランドを使っていましたが、今はパンテーンのミラクルズというシリーズの、香りと仕上がり感が気に入っています」(美容意識の高い、女性会社員)

 また「ラックス」(ユニリーバ)はシャンプーとしての日本発売は1989年と、今年で31年になる。日本ではヘアケア商品として、ハリウッド女優を起用したCMでも有名だ。グローバル市場ではスキンケア商品で知られる。

「プレミアム価格」と「ボタニカル系」

 現在の市場特性について、仲田氏はこう解説する。

 「価格帯別で言えば、近年『プレミアム価格帯』(シャンプー本体価格800円以上の中・高価格帯)のブランド・アイテムが売り上げを伸ばしています。花王では10年前と比較して、2020年は、プレミアム価格帯のインバスヘアケア市場における構成比は約2.6倍(※2)に拡大すると見込んでいます」

(※2)2010年:プレミアム価格帯構成比19.6%⇒2020年:51.4%(インテージSRIデータを基にした花王予測)

 一方、メリットは同800円未満の低価格帯だ(花王ではリーズナブルマスと呼ぶ)。高価格帯では、例えば「アミノメイソン」(ステラシード)など、一般にはなじみの薄い商品が多く、「アルジェラン」(マツモトキヨシ)のようなドラッグストアPB商品も人気だ。

 また、店頭を観察すると「ボタニカル」(植物系や植物由来)を訴求したシャンプーも目立つ。なぜこんな状況なのか。

 「ヘアケア市場では、以前から『植物物語』(ライオン)に代表される植物系の訴求はありました。それが近年の環境問題や、経済状況などの生活不安から、シャンプーでもより安心・安全志向が高まったことが背景にあるのではないかと考えています」(仲田氏)

 新型コロナウイルスの影響で、シャンプー市場の今後は不透明だが、外出自粛や在宅勤務でも、日常生活の中で髪は洗う。生活必需品なので消費意欲の低下も少なそうだ。

 移り変わりの激しい市場の中で、メリットが人気ブランドでいられたのはなぜだろう。

 「1970年の発売当初から『頭皮・頭髪の清潔を守る』という基本価値を大切にしてきました。競合ブランドが『美髪』『ダメージケア』などを訴求する中、基本価値をぶらさず、かつ、社会の変化・洗髪環境の変化に対応してきたことがポイントです。

 例えば1991年には、シャンプードレッサーの普及、朝シャンブームを背景に『リンスインシャンプー』を発売。また、2001年には、洗髪回数の増加、マイルド意識の高まり、さらに家族回帰の潮流を捉え、『弱酸性』に改良。家族みんなで使えるシャンプーとしての地位を築きました。

 2015年には、1人洗い(シャンプーを親介助なく自分ですること)を始めるお子さんに向けた、『泡タイプのシャンプー』も発売しています。時代とともに変化を続けながらも、いつも身近にあるという存在も、ご支持を受けた大きな理由ではないでしょうか」(仲田氏)

 今年6月からは「ドラえもん」の本体容器(限定)も登場した。これは「同い年」(ドラえもんの連載開始は1970年1月)と、「家族で人気」という点に着目したという。

 また、現在のCMでは、俳優の風間俊介さんと麻生久美子さんが夫婦役で登場。

 子役と一緒に「帰ったらすぐ髪も洗おう」を掲げ、タレントのみやぞんさんの歌と演技(リーゼントヘアの髪型が変わる)も注目される。「外出時の汗」と「コロナ対策」もあるようだ。

消費者意識を踏まえ、「訴求の軸足」を変えた

 仲田氏が語る、頭皮・頭髪の清潔を守るという「基本価値は変えない」はそのとおりだが、実はこれまで、メリットは何度か「訴求の軸足」を変えてきた。

 1970年の発売時、メリットは「フケ、かゆみを防ぐシャンプー」だった。当時の消費者が髪を洗う頻度は平均して「週2回」。まだ内風呂のない家が多く(1970年の普及率は約50%)、ヘアケア意識も低く、中高年男性の中には固形石鹸で洗髪する人が多かった。

 発売時はあまり人気が出なかったメリットも、数年経つと売り上げが拡大。CMで訴求した「フケ、なしね」という言葉が知られるようになった。ちなみにメリットと同世代の女優・石田ゆり子さんは10代から20代の頃、何度もCMに出演している。

 当時は髪の清潔といえば、「フケのない黒髪」をイメージする人が多く、石田さんも黒髪のロングヘアだった。

 このように花王の訴求も機能性中心で、広告でも発売時はジンクピリチオン(Zpt)、1985年からはミクロジンクピリチオン(M-Zpt)という有効成分を強調していた。

 それを大きく変えたのが、仲田氏の説明にあった2001年の「弱酸性」で、「新・家族シャンプー」を提唱した。CMも家族で使う情緒的価値を訴求し、現在に続いている。

 それには消費者の洗髪頻度が「ほぼ毎日」(1990年代から週5~6回)となり、昔ほどフケが出なくなったのも大きい。こうした不易流行(時代とともに変えること・変えないこと)を徹底して継続したことが、メリットを現在でも3強の地位にしているのだろう。

課題は「高感度女性」の取り込み

 また、メリットは昔から「オジサン人気の高い」ブランドでもある。

 以前の取材では「死ぬまでメリットを使う」と言い切った50代男性の声を聞いた。今回も「弱酸性のメリットでないとダメ」という中年男性もいた。

 「独自のすっきりした洗い上がりが評価されている」と聞くが、昔から行きつけの小料理屋やスナックに通い続ける(ブランドスイッチをしない)男性像をイメージしてしまう。

 一方で課題もある。高感度系の女性の支持は高くないのだ。

 筆者は「花王という会社を一言で表すと?」と聞かれると、「親しみやすいがカッコよくない」と答えてきた。エールを込めてだが、メリットはそんな花王の象徴のように思う。

 ただし、ヘアケアへの消費者意識が多様化した現在、同社は複数のブランドで訴求する。

 「花王は『メリット』のほか、キューティクルケアで美髪を保つ『エッセンシャル』、エイジングケアの『セグレタ』の3つのブランドがあります。頭皮・頭髪の清潔領域ではメリット、美髪領域ではエッセンシャル、そして人生100年時代のエイジングケア領域ではセグレタ。3つの領域で、お客様にお役立ちできる商品と価値をご提供していきます」(仲田氏)

 近年は、プレミアム価格帯の新ブランドも投入し、ブランド育成に力を注ぐ。

 シャンプーは「日用品」に区分されるが、女性消費者の声を聞けば聞くほど、「髪と肌へのケア」に気を遣う美容意識を感じる。その意味では“基礎化粧品”のような存在だ。

 「高感度」という言葉も、ウィズコロナ時代は少し意味合いが変わるだろう。それも含めて、プレミアム価格帯に投資する消費者の支持をどう高めていくか。

 1932年に「花王シャンプー」(固形タイプ)を発売して以来、90年近く消費者のヘアケアと向き合ってきた会社としての真価も問われる。

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June 23, 2020 at 11:20AM
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